博士の愛した数式
紹介文
第一回本屋大賞受賞作です。
【あらすじ】
家政婦として働く「私」は、ある春の日、年老いた元大学教師の家に派遣される。
彼は優秀な数学者であったが、17年前に交通事故に遭い、それ以来、80分しか記憶を維持することができなくなったという。
数字にしか興味を示さない彼とのコミュニケーションは、困難をきわめるものだった。
しかし「私」の10歳になる息子との出会いをきっかけに、そのぎこちない関係に変化が訪れる。
彼は、息子を笑顔で抱きしめると「ルート」と名づけ、「私」たちもいつしか彼を「博士」と呼ぶようになる。
【感想】
80分間に限定された記憶、ページのあちこちに織りこまれた数式、そして江夏豊と野球カード。
物語を構成するのは、数字・数式という普段意識しないもの。
最初は違和感がありましたが、読むにつれて数字・数式に親近感がわいてきました。
そして、この数学者の不器用な生き方にもどこか心惹かれるものがありました。
著者の数学者とも思える文章は、他者へのいたわりや愛情の尊さ、すばらしさを見事に表現しています。
博士とルートが抱き合うラストシーンにあふれるのは、何とも言えないしあわせな空間でした。
3人のかけがえのない交わりは、一方では、あまりにもはかない。
この本を読んだ後は、きっと、日常にある数字・数式に心が惹かれるようになると思います。
詳細
- 生徒★★★ 保護者★★★★
- 博士の愛した数式
- 小川洋子
- 新潮文庫 ¥438+税