小さい「っ」が消えた日
紹介文
著者が小さい頃、何もすることがないとき、同じアパートの印刷所のおじいさんのところへよく遊びに行っていました。昔のことですからコンピューターがなくて、印刷の仕事は、鉛でできている文字を大きな箱から一つ一つ取り出して文章を作り出すことからはじまりました。印刷が終わって、文字を箱に戻すときには、手伝わせてもらったそうです。その時、他の文字と違って発音されない言葉があるのに気づきました。それが小さい「っ」なのです。そこで著者は「もし小さい『っ』に音がないのなら、なくしてしまえばいいんじゃないの。」と聞きました。でも、その印刷所のおじいさんは「そんなことはないよ。音がなくても小さい『っ』はとても大切なんだ。そうだ、いい話をしてあげよう。これ聞いたらおまえさんも小さい『っ』がいかに大切かわかるようになるだろう。」といって次のお話をしてくれました。
五十音村に住む妖精たちの物語です。それぞれの文字には個性があります。
たとえば、「あ」という文字は自慢好きのおじさんで、いつもこう言います。「『あ』という音を表す文字は、あいうえお順でもアルファベットでも一番初めに来るから俺が一番えらいんだ。」
「は」と「ほ」と「ひ」と「へ」と「ふ」という文字は、それぞれまったく別な性格を持っているけれど、笑うことがみんな大好き。おもしろい冗談を言ったり、だじゃれを言うと、この5人は「ははは」「ほほほ」「ひひひ」「へへへ」「ふふふ」と笑い出す。
「を」さんはいつも文字と文字の間に自分を置き、中流的な立場をくずさない。
「か」さんは、自信があまりなく、哲学者みたいに何でも疑う性格。「やろうか?それとも、やめておこうか?」とあれこれ悩んで、とても優柔不断。
「ん」さんはとても謙虚です。たとえば、ドアを通るときには、人に順番を譲ったり、まわりの人を優先してあげたりするので「ん」さんはみんなの後ろにいることが多い。
というように一つ一つの文字に個性があってすごく納得してしまうのです。しかも、「、」(てん)や「。」(まる)にまで、おもしろい性格があるのです。
あるとき、小さい「っ」さんが自分なんかいなくてもいいやと村を出てしまって大騒ぎに!!
後は読んでみてください。本当におもしろいですよ。
こんな風に言葉を感じたことはありましたか。
詳細
- 生徒★★★★★・保護者向★★★ 小学生★★★★★★
- 小さい「つ」が消えた日
- ステファノ・フォン・ロー(文)
- トルステン・クロケンブリンク(絵)
- 三修社 ¥1400+税