無私の日本人
紹介文
この本は、江戸に生きた3人の清冽な日本人の人生を、磯田道史さんという歴史家が資料をもとに緻密に描きあげた感涙必至の物語です。
作者の磯田道史さんは、10年前に『武士の家計簿』(映画化もされました。)という作品も書いた人です。
私は昨年、本校の生徒対象講演会に来てくださった白駒妃登美さんの本を読んでいる中で、この本を知りました。
読んでみると感動しました。江戸時代にこんなにみんなのことや子孫のことを考えて自分を犠牲にして生きていた人がいたなんで驚きです。
しかも主人公は、武士ではなく、一般庶民。
そして、ついに、この本の中の第一話が映画『殿、利息でござる。』の原作にもなりました。
みんなが読んでおくべき本だと思いました。ぜひ、読んでみてください。
この本を書くきっかけを著者の磯田さんが書いているので紹介します。
ある老人の執念がこの本を書かせた
私のところに、見ず知らずの人から便りがきた。
「自分は東北に住む老人である。『武士の家計簿』を読み映画も見た。
実は、自分の町吉岡宿にこんな話が伝わっている。涙なくしては語れない。
ほんとうに立派な人たちの話である。
この人たちの無私の志のおかげで、わたしたちの町は江戸時代を通じて、人口も減らず、今にいたっている。
磯田先生に頼みたい。どうか、この話を本に書いて後世に伝えてくれないだろうか」。
そういう内容であった。
妙に気にかかる。わたしは引き込まれるように調べはじめた。東京大学農学部の図書館で仙台叢書を閲覧し『国恩記』という詳細な記録をみつけた。
読んで泣けた。
わたしは歴史学者でもあるから、古文書を読むときは、たいてい冷静である。
これまで、古文書を読みながら、はらはらと両眼から涙を流すなどということはなかった。
『無私の日本人』は書こうと思って出来た本ではない。
いまのままではいけないと憂うる人の心が、わたしに自然に書かせた本である。
詳細
- 生徒★★★★ 保護者★★★★
- 無私の日本人
- 磯田道史
- 文春文庫 ¥590+税