最近注目されている「非認知能力」とは?

最近、教育の世界で子どもたちが、社会の一員として活躍して、正解のないこの時代に対応していくために必要な力として「非認知能力」という言葉がよく使われています。今日はこの用語を解説している文章がありましたので紹介します。
※本記事は『勉強ができる子は何が違うのか』から抜粋したものです。

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最近注目されている「非認知能力」とは?

 教科書を読んで新たな内容を学習する際には、まず文章の意味を読解する必要がある。さらには、すでにもっている知識を用いて、新しい内容を理解する必要がある。たとえば、初めて掛け算を学ぶ際には、足し算を応用し、5×3は5を3つ足すのと同じだというように理解する。
 でも、このように文章を読解したり既存の知識を引き出して用いたりする知的活動以外の要因が、じつは勉強ができるようになるかどうかに深く関係することがわかってきた。そこで最近教育界で注目されているのが非認知能力だ。
 非認知能力というのは、自分をやる気にさせる力や忍耐強く物事に取り組む力、集中力、我慢する力、自分の感情をコントロールする力など、学力のような知的能力に直接含まれない能力のことである。
 勉強ができるようになるには知的能力を高めることが大事だと言われ、知的能力の開発を重視した早期教育が盛んに行われているが、たとえ一時的に効果がみられたとしても、長い目で見るとほとんど効果がみられなかったりする。
 たとえば、みんなより早い時期から勉強して、知識をたくさん詰め込めば、友だちがまだ字が読めないのに、読めるどころか字が書けたり、友だちが計算などできないのに足し算や引き算ができたりする。
 でも、多くの場合、いずれ周囲のみんなも字を読んだり書いたりできるようになり、計算もできるようになる。そうなると、結局みんなに追いつかれ、差がなくなってしまう。差がなくなるだけならよいが、早い時期から勉強をする代わりに、遊びや家庭のしつけを通して忍耐力や集中力、我慢する力などを身につけてきた子に学力で逆転され、さらには差をつけられてしまうことさえある。
 これはけっして幼児期だけの問題ではない。小学生であろうと中学生や高校生であろうと、このような非認知能力を高めないとなかなか勉強ができるようにはならない。
 いくら知的能力が高くても、やる気や忍耐力がなければ学力は向上せず、その成果としての成績も良くならないだろう。たとえば、宿題をやったり復習をしたりしていて、わからないことが多くて嫌になるようなとき、何とかわかるようになりたいと粘る子と、もう嫌だと投げ出す子では、その後の成績に大きな差がつくはずだ。
 あるいは、知的能力がたとえ同じであっても、我慢する力があるかどうか、いわば衝動をコントロールすることができるかどうかで、成績に大きな差がつくはずだ。たとえば、我慢する力があれば、見たいテレビがあったり、友だちから遊びに誘われたりしても、そうした誘惑に負けずに試験の準備勉強ができるだろうが、我慢する力が弱ければ、誘惑に負けて準備勉強をさぼってしまうだろう。
 このような非認知能力は、勉強する際の頭の使い方そのものではないけれども、勉強ができるようになるかどうかに大きく影響する要因と言ってよい。

非認知能力を高められるかどうかで、将来が違ってくる
 非認知能力の中核を成すのは自己コントロール力であるが、自己コントロール力についての研究の原点とみなすことができるのが、心理学者ミシェルたちの満足遅延課題を用いた実験である。
 それは、マシュマロ・テストとも呼ばれ、子どもにマシュマロを見せて、今すぐ食べるなら一個あげるが、研究者がいったん席を外して戻るまで待てたら二個あげると告げ、待つことができるか、それとも待てずに食べてしまうかを試すものである。
 これは、より大きな目標のために欲求充足を先延ばしできるかどうかをみるための実験と言える。
 ミシェルたちは、保育園児550人以上にマシュマロ・テストを実施し、その子たちが青年期、成人初期や中年期になったときにも追跡調査を行っている。
 その結果、幼児期により大きな満足のために欲求充足を延期することができた者は、10年後の青年期には、欲求不満に陥るような状況でも強い自制心を示し、誘惑に負けることが少なく、集中すべき場面では気が散らずに集中でき、ストレスにさらされても取り乱さずに建設的な行動をとりやすいことがわかった。
 さらに、20代後半になったときも、長期的目標を達成するのが得意で、危険な薬物には手を出さず、高学歴を手に入れ、肥満指数が低く、対人関係もうまくやっていくことができるというように、自己コントロールがきちんとできていることが確認された。
 その後の追跡調査をみると、40年後の中年期になっても、相変わらず高い自己コントロール力を維持していた。
 このように、4~5歳の幼児期に欲求充足を先延ばしできるかどうかで、10年後や20年後、さらには40年後の自己コントロール力を予測することができ、それによって学業・仕事や人間関係を含め社会でうまくやっていけるかどうかを予測できることが示されたのである。
 その後も、就学前の自己コントロール力が高い者ほど、10年後に学業的にも社会的にも成功していることが示されたり、30年後に収入面でも健康面でも成功しており薬物依存や犯罪も少ないことが示されたりしている。
 幼児期に戻って自己コントロール力を鍛えるわけにもいかないし、今さら言われてもどうしようもないと思うかもしれない。しかし、幼児期に限らず、中学生を対象とした調査研究でも、自己コントロール力の向上がその後の学業成績の向上につながっていくことが確認されている。

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知識の獲得以外の大切なものがあるようですね。