「バスのなかで」(坂村真民)

本日は『坂村真民一日一詩』に収録されている詩の中から、「バスのなかで」という作品をご紹介します。

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「バスのなかで」

この地球は
一万年後
どうなるかわからない

いや明日
どうなるかわからない

そのような思いで
こみあうバスに乗っていると

一人の少女が
きれいな花を
自分よりも大事そうに
高々とさしあげて
乗り込んできた

その時
わたしは思った
ああこれでよいのだ

たとい明日
この地球がどうなろうと
このような愛こそ
人の世の美しさなのだ

たとえ核戦争で
この地球が破壊されようと
そのぎりぎりの時まで
こうした愛を
失わずにゆこうと
涙ぐましいまで
清められるものを感じた

いい匂いを放つ
まっ白い花であった