「僕の声を聞いて」

昨年刊行された『致知別冊「母」』の続編の中で、
先達が残した大切な遺産ともいえる子守唄の
伝承・普及に取り組む西舘好子さんに、
ある少年の詩をご紹介いただきました。
内容の一部をご紹介いたします。
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家庭から失われた母の力、父の力
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西舘さんの会報にこんな文章が掲載されてあり、
衝撃を受けました。

「僕の声を聞いて」

おかあさん 
ぶってもけってもかまわないから
僕を嫌いにならないで。

おかあさん 
おねがいだから僕の目をちゃんと見て。

おかあさん
おまえを生まなければ
よかったなんていわないで 
僕は今ちゃんと生きているんだから。

おかあさん
優しくなくてもいいから、僕に触って。

おかあさん
赤ちゃんの時抱いてくれたように抱いて。

おかあさん
僕の話にうなずいてくれないかなあ。

つらい、悲しい、もうダメ、
お母さんの言葉ってそれしかないの。
赤い爪魔女みたい、ゴム手袋のお台所、
お部屋のあちこちにある化粧品、
僕の家のお母さんのにおい、
僕の入れない世界で満ちている。

おかあさん
お母さんの匂いが欲しい、
優しい懐かしいにおいが。

おかあさん
お願いだから手をつなごう、
僕より先に歩いて行かないで。

おかあさん 
お願いだから一緒に歌おう、
カラオケ屋じゃないよお家でだよ。

おかあさん 
500円玉おいてくれるより、
おにぎり一個のほうがうれしいのに。

おかあさん 
笑わなくなったね、
僕一日何度おかあさんが笑うかノートにつけているの

 【西舘】
母親から虐待を受けている少年の
悲痛な思いを綴った文章ですね。
私が小さい頃にはなかったことですけど、
親が我が子に暴力を振るい、
時に死に至らしめてしまう痛ましい事件が、
近頃は日常茶飯事になりました。

親の愛情というのは、
子どもにとって絶対的なものでしょう。
それがいま、根底から揺らぎ始めています。

いまの親というのは、
家庭で父親はどうあるべきか、
母親の役割は何かということが分からなくなっている。

父、母という言葉の重みがなくなって、
家庭が喪失してしまっているんですね。
特に、子育てに直接関わる母親の力が
家庭から失われてしまったことが、
こうした事件が頻発する根源じゃないかと思っています。
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おかあさん、おとうさん。
笑っていますか。
お子さんの目を見ていますか。
お子さんとスキンシップをしていますか。
お子さんの話にうなずいていますか。

そして、お子さんを嫌いになっていませんか。
お子さんと心はつながっていますか。