おばあちゃんとケーキ屋さん
『毎日が楽しくなる17の物語』志賀内泰弘著から紹介します。
モスバーガーの熊本県のある店で、実際にあった話です。
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それは、ある年のクリスマスの出来事だったそうです。
お店に一人のおばあちゃんが訪れました。
レジのところで、「ケーキを下さい」と言いました。
(え!?ケーキだって?)
店員はおかしいなと思いました。
おばあちゃんに聞くと、表に大きなクリスマスツリーが飾られているので、
てっきりここはケーキ屋さんだと思ってしまったというのです。
勘違いに赤面して戸惑っているおばあちゃんの姿を見て、
この店のオーナーは、「おばあちゃん、車に乗ってください」と言いました。
そして、車を走らせて一番近くのケーキ屋さんまで連れて行きました。
おばあちゃんが喜んでくれたことは言うまでもありません。
何度もお礼を言われました。
オーナーは、「クリスマスに人の役に立てて良かったな」と
気分を良くして、その他の用事もついでに済ませてお店に戻りました。
ところがです。さっきケーキ屋さんまで送っていったはずのおばあちゃんが、
お店の中にいるではありませんか。
これはどうしたことでしょう。
レジで接客している店員が、おばあちゃんにチキンを手渡すのを見て、合点がいきました。
なんと、そのおばあちゃんは、わざわざチキンを買うために戻ってきてくれていたのでした。
話を聞いてさらに感激しました。ケーキを買ったあと、
わざわざケーキ屋さんでタクシーを呼んでもらい、
「モスバーガーさんへ」と言って踵(きびす)を返してくれたのでした。
思わぬクリスマスプレゼントをもらったのは、当のオーナーのほうでした。
熊本のおばあちゃんは、本当に嬉しかったのでしょう。
モスバーガーのお店にとってはお客様ではありませんでした。
それを承知で、ケーキ屋さんまで送ってくれた。
売り手と買い手の関係を超えた「思いやり」が、おばあちゃんの心が染みたのでしょう。
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こんな店が近くにあると、その店は知らず知らずのうちに繁盛店になるでしょうね。
そんな気がします。