お母さんの反抗

第5回言の葉大賞『「言葉の力」を感じるとき』
柿本書房から入選作品を紹介します。
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「お母さんの反抗」
  
 私はお母さんです。
君に「うるせぇ、バカ」と言われたら悲しくなります。
「死ね」と言われたら泣きそうになります。
たとえ、無意識に口から出た言葉でも、お母さんは傷つきます。
もう何も言い返す元気もなくなります。
そんなことを言われた朝は「いってらっしゃい」を言えずに見送る時もあります。
君は言ったことすら覚えていなくても、お母さんは忘れられません。
学校へ行っていない君の机を見ると、ため息が出ます。
反抗期だからと気持ちを整理するには時間がかかりそうです。
 小さい頃から「人が聞いて嫌な想いをすることは言ってはいけません。」
と教えていたはずなのに。
お母さんは、大好きな君に対して、そのようなことは言わないはずです。
もし本当にお母さんが死んだらどうするの?
それでも平気でいられるの?
「死ね」っていうことは、いなくなって二度と会えないことなんです。
よく考えると簡単に口に出してはいけない言葉だと分かるはずです。
お母さんだって君と同じなのです。
調子が悪い時や年の為か節々が痛い時や、
君の知らないことで悩んだりもしています。
君が好きな番組を楽しみにしている日があるように、
お母さんにだってあります。
もっぱら、チャンネル権はありませんが。
君が遠足だとお母さんも前日からワクワクします。
お弁当に何を入れようかなぁ。と考えます。
参観日だって、見に行っている方なのに、
君が発表するときは、ドキドキします。
 これから先、いろいろな人と出会い
自分を磨きゆっくり成長して親離れしてほしいです。
成長の中で反抗期があるとするなら、人を見下すありふれた言葉
ではなく、君なりの言い方で、かかってきなさい。
お母さんもその犯行を正々堂々受けて立とうじゃないか。
明日も頑張るぞ。(吉田 美香子)
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あるお母さんの気持ちです。