寓話(ぐうわ)「やまあらしのジレンマ」
「仕事の思想」田坂広志著から紹介します。
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かつて哲学者のショーペンハウエルが
「やまあらしのジレンマ」という寓話(ぐうわ)を残しています。
あるところに二匹のやまあらしが住んでいました。
冬の朝、とても寒いので、二匹のやまあらしは、
互いに暖めあおうとして身を寄せ合いました。
しかし、あまりに近く身を寄せあったため、二匹のやまあらしは、
自分の体に生えているハリによって、互いに相手を傷つけてしまいました。
その痛みから、二匹のやまあらしは、互いに離れたのですが、
今度はまた、寒くてたまらなくなりました。
そこで、ふたたび二匹のやまあらしは、身を寄せあいました。
するとまた、互いに相手を傷つけてしまったのです。
こうして、二匹のやまあらしは、離れたり、近づいたりすることを繰り返し、
ついに最適の距離を見出したのです。
現代においてはこの「やまあらしのジレンマ」があふれています。
多くの人々が、互いの距離のとりかたがわからずに苦しんでいます。
そして、相手に近づきすぎて互いに傷つけあってしまうことを恐れ、
近づかないようにしてしまうのです。
しかし、それは「最適の距離」ではなく、
互いが絶対に傷つかない「安全な距離」にほかなりません。
そして、その「安全な距離」においては、
互いが心の寒さを感じるだけではなく、
互いの心が成長していくこともできないのです。
「安全な距離」では、私たちが「人間力」というものを身につけていくことはできないのです。
一人の人間として成長していくことはできないのです。
人間との格闘こそが、人間力を磨くための唯一の道である。
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中学生・高校生の時には、友達関係でいろいろとトラブルがあるかもしれません。
でも、その一つ一つがあなたの成長の種となっているのです。
全身で友達にぶつかっていってください。
なかにはすぐに解決できないこともあるかもしれない。
でも、時が解決してくれることもあります。
ずっとあとになって考えてみると、
笑える日が来ると信じて。