心を込めて「いただきます」「ごちそうさま」を
ご存知「コトバの力」「メイトクの本棚」で紹介した比田井和孝さんが配布している「子育てをするあなたにどうしても読んでほしい大切な話」
という小冊子があって、そこにみやざき中央新聞の記事が紹介されていました。
その、みやざき中央新聞の記事を紹介します。
※この話は、以前「メイトクの本棚」で紹介した「命をいただく」という絵本の内容と同じです。
==========
その絵本の帯に、一人の名もない主婦のメッセージが書かれていた。
「朗読を聴いて、うちの娘が食事を残さなくなりました。」
———————————————-
絵本に食肉加工センターの「坂本さん」という人が登場します。実在の人物です。
坂本さんの職場では毎日毎日たくさんの牛が殺され、その肉が市場に卸されている。 牛を殺すとき、牛と目が合う。そのたびに坂本さんは、 「いつかこの仕事をやめよう」と思っていた。
ある日の夕方、牛を乗せた一台のトラックがやってきた。「明日の牛か・・・」と坂本さんは思った。
しかし、いつまで経っても荷台か ら牛が降りてこない。 不思議に思って覗いてみると、10歳くらいの女の子が、牛のお腹をさすりながら何か話しかけている。その声が聞こえてきた。
「みいちゃん、ごめんね。みいちゃん、ごめんね……」
坂本さんは思った、「見なきゃよかった」
女の子のおじいちゃんが坂本さんに頭を下げた。
「みいちゃんはこの子と一緒に育てました。だけん、ずっとうちに置いとくつもりでした。ばってん、みいちゃんば売らんと、お正月が来んとです。明日はよろしくお願いします…」
「もうできん。もうこの仕事はやめよう」と思った坂本さん、明日の仕事を休むことにした。
家に帰ってから、そのことを小学生の息子のしのぶ君に話した。しのぶ君はじっと聞いていた。
一緒にお風呂に入ったとき、しのぶ君は父親に言った。
「やっぱりお父さんがしてやってよ。心の無か人がしたら牛が苦しむけん」
しかし坂本さんは休むと決めていた。
翌日、学校に行く前に、しのぶ君はもう一度言った。
「お父さん、今日は行かなんよ!(行かないと いけないよ)」
坂本さんの心が揺れた。そしてしぶしぶ仕事場へと車を走らせた。
牛舎に入った。坂本さんを見ると、他の牛と同じようにみいちゃんも角を下げて威嚇するポーズを とった。
「みいちゃん、ごめんよう。みいちゃんが肉にならんとみんなが困るけん。ごめんよう」と言うと、 みいちゃんは坂本さんに首をこすり付けてきた。
殺すとき、動いて急所をはずすと牛は苦しむ。坂本さんが「じっとしとけよ、じっとしとけよ」と 言うと、みいちゃんは動かなくなった。次の瞬間、みいちゃんの目から大きな涙がこぼれ落ちた。 牛の涙を坂本さんは初めて見た。
坂本さんの話を聞いて感動した内田美智子さん(内田産婦人科助産婦、「いのち」をテーマに全国で 講演活動を展開中)は、坂本さんの了解を得て、この話を『いのちをいただく』(西日本新聞社刊)というタイトルの絵本にされました。
その絵本のあとがきに、内田さんはこう書いています。
「私たちは奪われた命の意味も考えず、毎日肉を食べています。
自分で直接手を汚すこともなく、坂本さんのような方々の悲しみも苦しみも知らず、肉を食べています。
『いただきます』『ごちそうさま』も言わずにご飯を食べることは私たちには許されないことです。
感謝しないで食べるなんて許されないことです。
食べ残すなんてもってのほかです・・・・・・」
そう、私たちはいのちを食べていた。今日いただくいのちに・・・・・・合掌。