親の“一生懸命な気持ち”が子供の負担になるとき(子育てシリーズ㉒)

児童精神科医である佐々木正美さんのお話はすごく共感できることが
多くて今までにもたくさん紹介してきましたが、今回は
『やすらぎ子育てアドバイス』という文庫本から紹介します。
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 親が一生懸命に子育てをしているのに、
子どもが悪い方へ行ってしまうことがあります。
結果的に育児がうまくいかなかった場合、
いい専門家に頼ることも一つの方法でしょう。

 しかし、基本的には、もう一度、自分が家庭の中で
やってきたことを少し見直さなければなりません。
 そして、その時、「この子のために自分がいる」
という喜びや誇りに思える感情を親が取り戻すことが
何よりも大切です。

「この子の笑顔のために私がいる」という感情です。
言葉を換えると、子どもの喜びをわが喜びに感じられる、
そんな感情を取り戻すことです。
親はしばしば「自分の喜びのために、子どもにこうしてもらいたい」
と思うことがあります。子どもに何かしてもらうことが「自分の喜び」
だと勘違いしている親もいます。
 私は、相談に見えるお母さんとの面接でも、ここのところを
一番努力してお話しています。
つまり、「人の喜びをわが喜びとする」
=これが人間の本当の喜びなのです。

 たとえば、音楽の演奏家は、なぜ地道な訓練、練習に
耐えられるのかというと、演奏会場で観客が「感動した」
という喜びを表現してくれるからです。
あの喜びをまた感じたいからなのです。
 マラソンランナーがなぜ、あのような過酷な練習に
耐えられるかというのも、沿道の観客が応援してくれ、
そして、ゲートをくぐって観覧席に戻ってきたとき、
観衆と感動を分かち合えるからです。
 こんなに多くの人たちに自分は大きな感動を
与えられたと思えるからです。
 無人島で一生を送る人が、マラソンの練習に励む
なんてことはありえないと思います。
 おそらく音楽の練習だってしないでしょう。
人間とはそういうものです。
 
 このように、「誰かに喜んでもらうために自分が存在し得た」
という喜びが、人間の最大の喜びなのです。
 「人の喜びをわが喜び」と感じられるようなお母さんに変わってほしい。
私はそこを繰り返し強調したいです。
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あなたは「自分の喜び」と「子供の喜び」の
どちらを大切にしていますか。